初めての高揚感はさすがにもうないのかな…
そう感じながら訪れた二度目の香港は、雨の中。
やっぱり圧倒的な街並みに目を丸くしたまま、空港から九龍へと向かうバスに揺られていた。
数多くの安宿が密集している、尖沙咀にある雑居ビル「重慶大厦」。今回は、そのビルの一室に滞在していた。
この重慶大厦は、ウォン・カーウァイ監督の映画『恋する惑星』(1994)の舞台にもなっているのだけれど、映画のイメージで訪れると(もううろ覚えだけど…)、そのあまりにもディープな雰囲気に度肝を抜かれることとなる。
複雑な人間模様、明らかな犯罪の気配、直視できない不衛生な状況…
とにかく濃密過ぎて、初めは怯えてばかりいたけれど、日増しにそこへ馴染んでいく自分がいたことが驚きだった。
そして、今回は「Art Basel in Hong Kong」を訪れたことも、想像を絶する体験だったように思う。
あの興奮は、まだまだ上手く言葉にはなりきらないくらい。
一つ言えるとしたら、アートに息切れをしたことは初めてだったかもしれない。
何か物凄い渦のようなものに飲まれていく、そんな感覚が残る街。闇をも消し去る熱量が輝き続ける街。だけど、その向こう側に、どうしようもない闇も見える街。
この街が好きなのか嫌いなのか、わたしはまだよくわからない。
Hong Kong 2019